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京都通

  • 2009/10/17

第148回 風俗博物館『雅やかな源氏物語の世界にタイムトラベル』

源氏物語の六條院へおこしやす

京都を舞台とした物語として、誰もが知っている作品といえば源氏物語ではないでしょうか。
今から約1000年の昔、平安時代に書かれた世界最古の文学作品として、世界でも有名です。
そんな源氏物語の世界を体感できる博物館、それが風俗博物館です。

博物館は法衣店(ほういてん・仏教の僧の衣装などを取り扱うお店)のビルの5階にあります。
エレベーターを上がると、そこには香が焚かれており、源氏物語の世界が広がっています。

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最初に目に飛び込んでくるのは、大きなお屋敷の模型の中にひしめく、平安時代の装束を着た人形たち。
この建物が、光源氏の邸宅・六條院の春の御殿の中の寝殿と東の対です。
平安時代の資料を基に、4分の1のスケールで忠実に再現しています。
そして中の人形は、光源氏をはじめ、紫の上や冷泉院、夕霧などの登場人物が、それぞれの場面に合わせて配置してあります。
人形のサイズも4分の1で作られているため、実際に人が建物の中にいるようなリアリティがあります。

博物館だけに、衣装にも細心の注意を払って作られています。
着物の柄なども、当時のものを再現し、模様は全て4分の1の大きさで織られています。
そして1体1体、それぞれの位にあわせて、色の組み合わせや重ね方、着方など、資料に忠実に再現されているのです。

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物語の中には出てこないものもあります。
物語では、主人公だけがクローズアップされていますが、実際の生活では、多くの女房がそれぞれに仕事をしていたり、お付きの人々がいたりします。
そんな、屋敷の中の日常的な風景も、ここでは再現されているのです。

そのような展示を行っているのは、博物館が「平安貴族の生活を衣・食・住にわたって見てもらう」というテーマを掲げているからです。
源氏物語は、それらを表現するのには最適な素材だということです。
多くの人に知られている作品であり、約400年続いた平安時代の中で、時期を特定しやすい上に、年中行事や風習、習慣など多くの場面が描かれていることがその理由だといいます。

年に2回、展示は替わるんえ

風俗博物館では、1年に2回の展示替えを行っています。
六條院という建物はそのままに、季節や年中行事などを考慮して、源氏物語の違った場面を見せてくれます。
半年ごとに、違った展示が見られるとあって、何度も訪れる人もいるほどです。

今年の秋・冬の展示のメインは、源氏物語ではなく、紫式部日記より「一条帝の土御門第行幸(つちみかどだいぎょうこう)」。
歴史的事実をそのまま再現しています。
そして、珍しいことにこの展示では、紫式部の姿を見ることができます。
どの人形が紫式部なのか、当ててみるのも楽しいでは?
答えは博物館の人に聞いてみるといいでしょう。

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行幸の場面で注目したいのが、女房の髪型や衣装。
ひとくちに十二単といっても、天皇付きの女房と藤原家に仕える女房とでは、違っています。
髪を結い上げている天皇付きの女房のスタイルなどは、ほとんど見たことがなく、新鮮です。

ほかにも、源氏と紫の上が童(わらわ)達に雪だるまを作らせている「雪まろばし」や上皇と貴族の若君達が集って管弦の遊びに興じる「月の宴」など、季節や行事にあわせた展示も見物です。
そして、これらの展示の間には、裁縫などの仕事をしている女房達の日常生活も再現されています。

ファッションに興味がある人には、「四季のかさねの色目に見る平安王朝の美意識」の展示がおすすめ。
季節感を大切にし、繊細な色を組み合わせていく、日本古来のファッションセンスを堪能できます。

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もうひとつの展示は、若紫の雛(ひいな)遊び。
祖母の死によって源氏に引き取られた若紫(幼少の紫の上)は、喪を意味する鈍色の衣装を着ているところなど、源氏物語の設定をそのまま再現しています。
このように、六條院という1つの舞台の上で、源氏物語を中心にいろいろな場面を再現し、リアルに見せてくれる展示がなされています。

※ご紹介した展示は、2009年11月30日まで。
2010年1月7日以降は、新しい展示になります。

平安時代の装束をおめしやす

風俗博物館には、平安時代の装束を体験できるコーナーもあります。
実際に当時を再現した衣装に袖を通すことで、より身近に平安貴族の世界を感じてもらおうというものです。
衣装は、男女それぞれ2着ずつが用意されています。
平安貴族になった気分が楽しめます。

しかし、ここは博物館で、変身写真館などではないため、衣装は自分で着なければなりません。
着方がわからない時には、博物館の人に聞けば、教えてくれます。
そして、記念写真はご自分のカメラで。
等身大の光源氏の人形や十二単の女房の人形と並んで、記念写真を撮るのも楽しいですね。

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ここには、ほかにも実物大に復元された御帳台(みちょうだい)や厨子(ずし・置き戸棚)、鏡箱(かがみばこ・鏡をしまっておく箱)、火取(ひとり・香を焚く道具)などの貴族には欠かせない生活用品も展示されています。

御帳台は、3畳ほどのプライベートな空間を作っています。
夜は寝室に、昼は休息などに使われていました。
御帳台の内部にも自由に入れますので、平安装束に身を包んで、御帳台の中で平安貴族の気分を味わうのもいいでしょう。

平安貴族の気分を存分に楽しんだ後は、きちんと後片づけをして帰ります。
借りた衣装は、自分なりにきちんと畳んでお返しするのがマナーです。
その点だけは、大人の常識として、守りたいものです。

このように、見て、着て、平安貴族の生活を身近に感じられる風俗博物館。
こぢんまりとした博物館ですが、いろいろな見方ができ、それぞれに楽しむことができる施設です。
源氏物語を読んだことのある人には、より深く物語の世界が理解できるようになることでしょう。
源氏物語をまだ読んでいない人にとっても、今とは違う平安の時代に思いをはせるいい機会となることでしょう。
秋の夜長、源氏物語を紐解いてみてはいかがでしょうか。

※12月1日~1月6日と6月1日~30日は展示替えのため、休館となります。

取材協力 : 風俗博物館
〒600-8468 京都市下京区堀川通新花屋町下る(井筒左女牛ビル5階)
電話番号 : (075)351-5520

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