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  • 2012/1/21

第243回 北野天満宮『学問の神様として名高い、北野の天神さん』

学才に秀でた菅原道真公ゆかりの神社なんや

「北野の天神さん」と親しまれている北野天満宮は、平安時代に活躍した学者出身の政治家・菅原道真公を祭神として祀っています。
学者の家に生まれた道真公は幼い頃から文才があり、5歳で和歌を詠み、11歳で漢詩を作り、天才と賞賛されました。
学者として最高位である「文章博士(もんじょうはかせ)」となり、後に朝廷の最高機関である右大臣の座まで上りつめます。

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そして、左大臣の藤原時平と並んで、国家の政務を統括しますが、中流階級である彼の出世は、名門貴族の嫉妬の対象にもなりました。
こともあろうか、時平の策謀によって無実の罪を着せられた道真公は、昌泰4年(901年)九州の大宰府に左遷されてしまいます。
その2年後、身の潔白を証明できぬまま、59年の生涯を閉じました。

道真公の没後、京の都は天変地異や疫病などの災難が相次ぎ、さらには時平をはじめ周囲の人間にも不幸が続きます。
「これは道真の祟りだ」と人々は噂し、ようやく朝廷も道真公の罪を許し、名誉挽回のために、右大臣の職を再び与えました。
そして世の平安を願い、道真公の御霊を祀る、北野天満宮が創建されたのです。
それは、道真公が亡くなってから44年後、天暦元年(947年)のことでした。

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今日では、全国に約1万2000もある「天神さん」の中心として、「正直・至誠の神」「冤罪を晴らす神」「学問・和歌・連歌の神」「芸能の神」などの信仰が寄せられています。
特に、成績向上や試験合格などを祈願する修学旅行生や学生が絶えず訪れ、絵馬掛所は願い事が書かれた無数の絵馬で埋め尽くされています。

秀吉主催の盛大な大茶湯が行われたんどすえ

北野天満宮は、天正15年(1587年)10月1日、豊臣秀吉の主催による茶会「北野大茶湯(きたのおおちゃのゆ)」が催されたことでも有名です。
これは九州平定(きゅうしゅうへいてい/九州における敵対勢力を抑え、平和をもたらすこと)が成功したお祝いと、聚楽第(じゅらくだい/秀吉が建てた政庁兼邸宅)の完成記念を兼ねたもので、派手好きの秀吉らしく大規模なイベントでした。

秀吉は大坂城で大名を集めた「関白茶会」や、天皇に茶を献じる「禁中茶会」を過去に開催してきましたが、この北野大茶湯の特徴は大名をはじめ庶民までも対象にしたこと。
畿内一円に御触れを出し、農民から公家まで身分を問わず参加を呼びかけました。
茶の湯に関心があれば誰でも参加が許され、茶道具も何でもいいから持参し、服装も履物も自由でよいという、きわめて斬新なものでした。

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当日は京都、大坂、堺、奈良から大勢の人が駆けつけ、境内には無数の茶屋が立ち並びました。
秀吉は折り畳み式の黄金の茶室を持ち込み、自慢の茶道具をずらりと並べ、自由に見物できるようにしました。
これとは別に4つの茶席が作られ、秀吉のほか千利休、津田宗及(つだそうぎゅう)、今井宗久(いまいそうきゅう)という当代きっての茶人たちがお茶を点てました。
この時、茶の湯を汲んだと伝わる太閤井戸が参道横に残っており、「北野大茶湯之址」と書かれた石碑がその近くに立っています。
この一大イベントは、茶道を世に広めるきっかけになったともいわれています。

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ほのかな梅の香りを楽しんでおくれやす

ここは京都でも屈指の梅の名所として知られています。
道真公は大宰府に左遷される前に、自邸の梅の花を思って、次の歌を残しました。

「東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ梅の花 主(あるじ)なしとて 春を忘るな」
(東風が吹いたら、匂いを大宰府にいる私のもとまで寄越しておくれ、梅の花よ。主人がいないからといって、春であることを忘れるなよ)

道真公の愛した梅が主人を慕って、一夜にして京都から大宰府に飛んできたという「飛梅」の伝説は有名です。

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現在、梅をこよなく愛した道真公を偲ぶため、北野天満宮では道真公の命日にあたる2月25日に「梅花祭」が行われています。
約900年の歴史をもつ由緒ある祭事で、この日は門前にある上七軒の芸妓さん・舞妓さんが抹茶を点てる「野点茶会」も行われます。
毎月25日に行われている縁日「天神さん」と重なる2月25日は、二つの大きなイベントでより一層の賑わいを見せます。

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また、梅と深い関わりのある北野天満宮には、約1500本の梅の木があり、その種類は約50種にも及びます。
早咲きの梅は、12月中旬頃からつぼみがふくらみ、お正月を迎える頃には冬至梅、照水梅、寒紅梅などが春の訪れを告げるように咲き始めます。
見ごろとなる2月から3月にかけては、梅の香りが境内を満たし、華やいだ雰囲気に包まれます。

さらに、梅の開花に合わせて特別公開される「梅苑」では、和魂梅(わこんばい)や黒梅(こくばい)、座論梅(ざろんばい)、緋の司(ひのつかさ)などの珍種を見ることができます。
苑内の茶店でお茶をいただきながら、梅の花を愛でる初春のひと時。
平安貴族も興じたという「梅の花見」を、雅やかな気分で楽しんでみてはいかがでしょう。

※梅花苑の公開
平成24年2月上旬から3月下旬まで

取材協力 : 北野天満宮
〒602-8386 京都市上京区馬喰町
電話番号 : (075)461-0005

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