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京都通

  • 2017/11/25

第328回 妙顕寺『京都における日蓮宗最初の道場』

後醍醐天皇の勅命を受けた門下唯一の勅願寺どす

京都御所の北西に位置する「妙顕寺(みょうけんじ)」は、日蓮宗四大本山の一つで、正しくは「具足山 四海唱導 妙顯寺」といいます。「四海唱導(しかいしょうどう)」とは、世界中(四海)の人々を法華経の教えに導き、その功徳によって人々を救うという意味が込められています。

妙顕寺は日蓮宗の開祖・日蓮聖人の孫弟子にあたる日像上人によって建立されたお寺で、幼い頃から聡明だった日像上人は6歳の頃、日蓮聖人からご本尊を預かり、経一丸の名を与えられて出家。日蓮聖人最期のときには、枕元にて叶わなかった京都の布教を託されました。日像と名を改め、修行を重ねた上人は、永仁2年(1294年)4月に京都開教の一歩を踏み出しますが、京都の町衆に信仰が広まるにつれ、他の社寺による圧力を受け、三度にわたって洛外へ追放されました。

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しかし、新たな先を拠点にしながら関西一円で法華経信仰を広めていき、その粘り強い布教によって、鎌倉時代後期の元亨元年(1321年)、後醍醐天皇より寺領を賜り、京都における日蓮宗最初の道場して「法華堂」を創建しました。これが、妙顕寺の始まりとなっています。

建武元年(1334年)には後醍醐天皇の勅命により、門下唯一の勅願寺となり、大いに栄えました。移転を何度か繰り返し、天正11年(1583年)には豊臣秀吉の都市計画によって、二条西洞院の旧地から現在の地に移されました。その跡地には「妙顕寺城」が造られ、聚楽第完成までの京都の政庁となっていました。今はその姿を見ることはできませんが、城跡には石碑が建てられ、古城町という町名が残っています。

趣きある三つのお庭が楽しめるんやてなぁ

江戸時代の天明8年(1788年)に起きた天明の大火によって伽藍は焼失しましたが、すぐに復興。現在の建物の大半は天保5年(1834年)に再建されたものです。

京都府指定文化財の本堂の内陣には釈迦如来像や多宝如来像が祀られ、日蓮聖人や日像上人などの尊像が安置されています。天井にはかつて二体の龍の絵が描かれていましたが、昭和50年(1975年)に老朽化により崩れてしまったため、格天井には修復するのに寄進された方々の家紋や寺紋が奉納されています。

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そして、3つの庭園も見どころで、客殿の庭は「四海唱導の庭」といい、貴人を迎えるための勅使門があります。左奥の3つの石組は滝を表し、滝から流れ落ちた水が白砂で表された大海へと広がっていく様子を表しています。

隣の書院には、琳派を代表する絵師・尾形光琳の絵図をなぞらえた「光琳曲水の庭」があります。尾形家は檀家だったため、妙顕寺とゆかりが深く、文献では光琳が設計したお庭がかつてあったそうで、天明の大火で焼失後、宝物庫に残されている光琳が描いた掛け軸をもとに現在のお庭が作られました。白砂の流れが美しく、樹齢400年の赤松や黒松の堂々たる枝ぶりに圧倒されます。

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どちらのお庭からも紅葉が楽しめ、春には桜が彩り、それは美しい光景を味わうことができます。また、「孟宗竹の坪庭」は小さいながらも、鮮やかな苔の緑と孟宗竹の清々しさに趣きが感じられます。ちなみにこの坪庭はCMで使われたこともあるそうです。

美しい紅葉を見に「龍華の秋」におこしやす

普段はお庭や本堂などは檀家さんや希望される方だけに公開していますが、春と秋の特別公開期間には多くの方が参拝されます。 今年は11月23日(水)~12月10日(日)まで「龍華(りゅうげ)の秋」を題して、寺宝の特別展示やお抹茶が提供されます。

寺宝はこの期間だけの公開で、「日像上人御一代記」や「後醍醐天皇の綸旨(りんじ)」、尾形光琳の晩年の作と伝わる「寿老松竹梅三幅対」、狩野永納による「極彩色日蓮聖人図」などがご覧いただけます。中でも、日像上人が書かれた「細字法華経」は、肉眼では見えないような小さな字で書かれた巻物で、一説にはネズミのひげで書かれたと伝わっています。(展示物の内容は変更になる場合があります)また、11月3日(金)から26日(日)までは夜間拝観・ライトアップも実施しており、近隣にある妙覚寺や本法寺とともに「三寺院同時特別展」が行われます。(三寺院同時特別展は11月24日まで)

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そして、妙顕寺では写経を体験することもできます。写経する部分は法華経の一節で、よくある般若心経の写経よりも少ない130文字となっています。さらには宿坊もあり、お寺の行事や年末年始を除いて、一日3組まで、基本的に女性限定で開放されています。また、「どんな部屋でも構わない」という声によって「お慈悲部屋」なるものも設けられているとのこと。宿坊をご利用の方は朝6時から本堂で行われる朝のお勤めに参加できるほか、敷地内のお庭も自由に拝観していただけます。

最近では御朱印を集めている方も多くいらっしゃいますが、こちらは日蓮宗のお寺ですので、御朱印ではなく「ご首題」をいただくことになります。描かれている文字は躍動感あふれる曲線が特徴的です。日像上人は京都での布教が無事成就するよう、鎌倉の由比ガ浜で100日間の荒行を行いました。その最後の日、海面に書いたお題目が金色に光って浮き上がり、波に揺れるように漂ったことから「波ゆり題目」と呼ばれています。

日蓮宗のお寺では、御朱印帳とは別に「御首題帳」を作って参拝してみるのが良いかもしれません。妙顕寺は京都市内の街中にありながらも、観光寺院ではないため、桜や紅葉のシーズン以外は静かにお参りしていただけます。癒しの場所として、一度お越しになってみてはいかがでしょうか。

取材協力 : 妙顕寺
〒602-0005 京都市上京区妙顕寺前町514
電話番号 : 075-414-0808
FAX番号 : 075-414-0848

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