Kyoto tsu
京都通
- 2019/1/19
第342回 大原の里『豊かな自然と田舎風情が満喫できるお宿』
気を張らんでええ民宿なんやてなぁ
京都の中心街から比叡山の方へ向けて山道を進むと、1時間も経たないうちに、豊かな自然に囲まれた隠れ里「大原」にたどり着きます。
周囲には三千院や宝泉院など多くの寺院が建つこの地は、古くから俗世を離れて仏に救いを求めた人たちが訪れた、そんな隠棲の地でした。
この辺りは特別風致地区で、新しい建物は基本的には建てられないため、茅葺屋根の民家や広大な田畑といった昔のままののどかな風景が広がります。
澄み渡った空気を身にまといながら、寂光院の方へ向かう参道を歩いていくと、民宿「大原の里」があります。
ここは約50年前に建てられた昔ながらの民宿で、2階立ての木造の建物には26室の大小さまざまな広さの和室があります。
畳敷きに机と座布団が置かれ、土壁に囲まれた室内はどこか懐かしく、とても落ち着いた雰囲気です。
旅館ではたいてい布団は敷いてもらえますが、このお宿は自分で敷かなければなりません。
そんな適度な距離感が心地よくもあり、宿泊代がお手頃なのも民宿のいいところです。
お部屋にはテレビもありますが、あえて見ずにゆっくりと時間を過ごす方も多いそうです。
また、冷暖房はありますが、冬は底冷えするので、フロントで補助の暖房器具を貸してもらえます。
一方、夏の時期は虫がやってくるため、宿では蚊取り線香や虫よけスプレーが用意されています。
各自対処しながら、自然との一体感を存分にお楽しみください。
こだわりの味噌で作った鍋料理が食べられるんどす
宿でのお楽しみといえば、やはりその土地ならではの食事ではないでしょうか。
こちらの名物は姉妹店「味噌庵」で100年以上前から作られている香り高い味噌と地元で採れた旬のお野菜、そして京都の赤地鶏が入った味噌鍋です。
今や大原の郷土料理として知られる味噌鍋ですが、実はここが発祥なのです。
味噌に使われている素材は大豆、塩、麹のみですが、そのすべてにこだわりが感じられます。
厳選された北海道産の大豆、それぞれの味噌にあった塩、300年以上変わらない製法で作られた種麹で作られた麹、そして大豆を煮るのに欠かせないのが、大原の山々から湧き出る美味しい水です。
完全無添加で、昔ながらの製法と環境、さらには熟練の技術によって、大豆をつぶす作業以外はすべて手作業で行われています。
樽出し味噌は熟成する期間によって、一年もの、二年もの、三年ものがあります。一年ものは辛く、二年ものはまろやかで、三年ものになると、スッキリとした味わいの中にほんのりとした甘みや旨みが感じられます。
一度食べると、ほかの味噌は食べられないというほどリピーターも多く、不思議なことに焦げ付かないのも特徴です。
そのほか、白辛口味噌、ピリ辛味噌、伯方塩の味噌、さんご塩の味噌、かつお節入り味噌、にんにく入り味噌、三倍麹味噌とさまざまな味噌が作られています。
民宿の味噌鍋に使われる味噌は、数種類の特製ブレンドとなっており、定番の味噌鍋のほか、コラーゲン味噌鍋、白味噌鍋、ピリ辛味噌鍋、地鶏すき焼き、ボタン鍋など種類も豊富です。
味噌鍋は民宿の向かいにある「雲井茶屋」でもいただけるので、ランチや休憩がてら立ち寄るのもおすすめです。
また、その前にある「味噌庵」では各種味噌をはじめ、白みそアイスや生チョコレートなど、評判のスイーツも販売しています。
ぬる目のお風呂で森林浴を楽しんでおくれやす
食事の後はゆっくり温泉に浸かって日頃の疲れを癒したいもの。
この宿には、ナトリウムイオンと炭酸水素イオン、ラドンの含有量が多い、近畿地方でも数少ない温泉があります。
大浴場、半露天風呂、そして森林浴が楽しめる露天の五右衛門風呂があり、山裾の木々の間から空を見上げると、とても開放的な印象を受けます。
この五右衛門風呂は直径2メートルとゆったりしているので、4人一緒に入浴することができ、お湯の温度が低めに設定されているため、心ゆくまで長湯が楽しめます。
療養と疲労回復効果が期待できるほか、お肌の角質を柔らかくし、ツルツルになることから、美人の湯とも呼ばれています。
また、このお風呂と味噌鍋などのお料理が楽しめる日帰り温泉コースもあります。
そして、建物に囲まれた中庭では、樹齢150年の立派な山桜が毎春、美しい花を咲かせます。
そのほか、紅葉、苔、ミヤコワスレやヤマユリといった山野草などが自生し、季節折々の風景を彩ります。
できるだけ草木をハサミで剪定することはせず、あえて枯れ枝を残すなど、樹木のもつ本来の魅力が感じられる"手を加え過ぎない"自然に近いお庭となっています。
大原の旧家で使われていた鞍馬石や貴船石といった京都の名石が置かれ、背後には山々が拡がり、山から流れる湧き水を池へと引き込んでいます。
清らかな湧き水のほとりにはワサビが自生し、モリアオガエルが棲みつき、すぐ近くの川では蛍が飛び交うなど、豊かな自然が満喫できます。
大原は雪が降ることも多く、冬の景色はまた格別です。
山里の自然や季節の移ろいを感じながら、味噌鍋とお風呂で心身を温め、のんびりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
取材協力 : 大原の里
〒606-0943 京都府京都市左京区松ヶ崎東町31
電話番号 : (075)744-2917
FAX番号 : (075)744-3245