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京都通

  • 2019/2/23

第343回 首途八幡宮『旅行安全のご利益がある義経ゆかりの八幡さん』

義経はんが奥州に向かう際に立ち寄らはったんどす

織物の町で知られる京都・西陣にある「首途八幡宮(かどではちまんぐう)」。
創建の時期は定かではありませんが、平安京の頃からあったといわれており、ここは大内裏(平安京の宮城)の北東の隅に位置するため、古くから王城鎮護の神とされていました。
大分県の宇佐八幡宮より、御神霊を勧請し祀られたのが始まりで、誉田別尊(ほんだわけのみこと/応神天皇)、比賣大神(ひめおほかみ)、息長帯姫命(おぎながたらしのみこと/神功皇后)の三神が祀られています。

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実は、首途八幡宮と呼ばれるようになったのは後になってからのことで、もともとは「内野(うちの)八幡宮」という社名でした。この辺りはかつて野原が拡がっており、その真ん中にあったので内野といわれており、今はその地名は残っていませんが、周辺の地域には紫野、北野、平野とその名残が見られます。

では、なぜ「首途八幡宮」と呼ばれるようになったのでしょうか。
今から約840年前の承安(じょうあん)4年(1174年)3月3日。
源義経がまだ牛若丸だった頃、父・義朝の仇を討つため、その当時修行をしていた鞍馬山を抜け出し、この地に邸宅があった金売吉次(かねうりきちじ)と落ち合います。
吉次は奥州の黄金と京の絹で財を成した伝説的な人物で、義経を欧州の藤原秀衡(ふじわらのひでひら)のもとへ案内したとされています。
義経は奥州へ出発するにあたって、吉次の屋敷近くにあった内野八幡宮を参拝し、源氏復興の祈願と道中安全を祈願したという伝説が残っているのです。

「首途(かどで)」とは「出発」の意味で、この由緒により、「首途八幡宮」と呼ばれるようになり、特に旅立ち、旅行安全、海外旅行安全の守護神として信仰を集めるようになりました。
境内に入ったところには「源義経奥州首途之地」と刻まれた石碑があります。

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ちなみに、「かどで」というと、今は「門出」という漢字が一般的ですが、これは当て字で、昔は「首途」が使われていたとのこと。
また、全国に八幡宮はたくさんありますが、その9割以上が京都府八幡市の石清水八幡宮から勧請されたもので、もともと石清水八幡宮も大分の宇佐八幡宮から勧請されています。
首途八幡宮はその宇佐八幡宮から直接勧請されているということから、由緒正しき八幡宮であることがうかがえます。

かわいらしい鳩に癒やされますえ

最初の鳥居をくぐり、参道を進むと、二つの鳥居に出迎えられます。
向かって左が本殿、右が弁財天を祀る弁天社の鳥居で、本殿はこんもりとした小さな丘の上にあるため、石の階段をいくつか上ったところにあります。
街中に突如現れたこの不思議な地形は、皇族のお墓だったとも考えられています。
また、何度も兵火に遭ったため、今の本殿は昭和の頃に建てられたものになります。

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境内を見渡すと、手を清める手水舎、門扉、納札箱、絵馬など、あちらこちらに鳩のモチーフが使われているのに気付きます。
八幡宮では鳩は神様のお使いとして、古来より崇敬されていますが、一説には宇佐八幡宮から石清水八幡宮へ八幡様を勧請する際、白い鳩が道案内をしたということから、八幡宮と鳩は深い関係で結びついているのだそうです。
境内の鳩を一羽、二羽と探していくと、穏やかな気持ちになれそうですね。
また、鳩をモチーフにしたお守としては、旅行安全のご利益がある「鳩守り」があります。

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そのほか、お神楽に使用する小さな鈴を十二つづって柄をつけた「神楽鈴」にちなんで、十二の吉祥開運の菊模様をあしらった「鈴守り」もあります。
これは、鈴を振り、よくなれ(鳴れ)ばなる(鳴る)ほど、よくなる(良くなる)開運厄除・病気平癒・子供守護のお守りです。

また、この織物の町・西陣ならではのお守りが「繭守り」で、蚕の繭を三つ重ねた開運招福厄除、門出(首途)のお守りです。
このお守りを神棚にお祀りすると、繭からとれた絹糸が着物に生まれ変わるように、嫁入り前の娘さんの荷物が増えて衣装持ちになり、持ち物が増える家運繁栄のご利益があるそうです。
そして、源義経奥州平泉の砂金にちなんで、金泥で「首途八幡宮」と書かれた「福鳩土鈴」は幸せと金運をもたらすといわれています。

桃の花が春の首途(かどで)をお祝してくれはります

首途八幡宮は源氏物語にも登場する桃園天皇が、親王の時代に暮らした旧跡としても知られており、当時は境内も広大でした。
そこには池や築山をめぐらせ、桃園天皇が愛した桃の木がたくさん植えられていたことから、春には桃の花が咲き誇り、桃花祭が盛大に執り行われていたそうで、今も4月上旬には「紅しだれ桃」をはじめ、桃の花が境内を華やかに彩ります。

「源平しだれ桃」は、源氏の旗色である白、平家の旗色である赤、その中間の3色が源氏と平氏が競い合うよう咲き乱れる大変希少な桃の木で、知る人ぞ知るお花見スポットとなっています。
お隣には桜井公園があり、ちょうど同じ頃に桜が満開になるので、桃と桜の競演が見られることからも人気を集めています。

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この時期に合わせて、毎年4月には「義経 首途祭(かどでさい)」が行われます。
830年前に源義経が道中の安全を祈願し、奥州を目指して旅立った由緒にちなんで行われているもので、当日は義経の御霊(みたま)和(なご)めの神事が執り行われます。

また、毎年9月15日は「例大祭」が、その前日の14日には宵宮祭が行われ、厄除け開運の御祈祷や、能や浪速神楽が奉納されます。
露店が数軒並ぶほか、この2日間限定で西陣織の着物の生地で作られた「金守り」の特別授与があります。

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桃の時期以外にも、境内には立派な百日紅(さるすべり)があり、夏には真っ赤な花を咲かせます。
かなり年代は経っていますが、これほど見事なものは他では見られないと、訪れた人の心を和ませています。

何か新しいことを始めるときは、是非、お花で彩られた首途八幡宮を参拝してみてはいかがでしょうか。

※平成31年の「義経 首途祭(かどでさい)」は4月5日(金)の予定です。

取材協力 : 首途八幡宮
〒602-8445 京都府京都市上京区智恵光院通今出川上ル桜井町102-1
電話番号 : (075)431-0977
FAX番号 : (075)431-0977

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