Kyoto tsu
京都通
- 2020/3/21
第352回 八大神社『宮本武蔵ゆかりの神社でいただく季節ごとの彩り御朱印』
700年以上の歴史を誇る一乗寺の氏神さんどす
京都・比叡山のふもと、洛北の一乗寺に位置する八大神社。
創建ははっきりしていませんが、鎌倉時代の永仁2年(1294年)に祇園社(八坂神社)から勧請されたことに始まったとされ、一乗寺の氏神様として親しまれてきました。
祇園社と同じ神様を祀ることから、「北天王(きたてんのう)」(北の祇園)とも称され、都の表鬼門(東北)に鎮座する皇居守護神十二社中の一つになっています。
御祭神は「素戔嗚命(スサノオノミコト)」、「稲田姫命(イナダヒメノミコト)」「八王子命(ハチオウジノミコト)」をお祀りしており、方除け・厄除け・縁結び・学業成就の神様として厚く信仰されています。
本殿は応仁・文明の乱で焼失した後、安土・桃山時代に再建され、現在の本殿は大正時代に造営されたものです。
宮本武蔵が決闘前に参拝しにきはったんやて
八大神社の境内地に「一乗寺下り松(さがりまつ)」といって、慶長9年(1604年)に宮本武蔵が剣術の名門・吉岡一門と決闘したと伝わる場所があります。
江戸時代初期の剣豪で兵法家、書画家としても知られる武蔵は21歳の時、吉岡一門の当主である清十郎、弟の伝七郎を倒しました。
面目をつぶされた吉岡一門が武蔵に復讐を臨んだのが「京都一乗寺下り松の決闘」です。
武蔵は決闘前に八大神社で勝利を祈願しようと参拝しましたが、神仏に頼る自分の弱さに気付き、祈らずに決闘に向かったという逸話が残っています。
この後、武蔵は70数名を相手に大勝していることから、今でも武道やスポーツをする人々が必勝祈願に来られます。
平安時代の昔から、近江から京に通じる交通の要衝にあり、旅人の目印、待ち合わせの場として植え継がれてきた下り松。
現在は5代目となっていますが、武蔵の決闘の時代以前から明治時代まで生きた古木は、八大神社の御神木として、境内に大切に保存されています。
その隣に置かれたブロンズの宮本武蔵像は、両手に剣を構える二刀流で、21歳の時の勇ましい姿で参拝者を魅了しています。
また、参道脇に武蔵の決闘が描かれた映画やドラマのポスター、写真が展示されています。
是非こちらも合わせてご覧ください。
境内の鎮守の森に、国指定天然記念物の「淡墨桜(うすずみざくら)」があります。
淡墨桜は岐阜県本巣群根尾村(現・本巣市)にある樹齢1500年もの桜の古木で、継体天皇が手植えをしたと伝えられます。
真っ白の花びらが、満開を過ぎて散る頃には、うっすらと墨色に変わるのでこの名が付けられました。
平成5年(1993年)に八大神社の鎮座700年祭に際し、根尾村とのご縁があって、淡墨桜の若木が植樹されたもので、春には美しい花を咲かせます。
伝統ある数々の祭事を楽しんでおくれやす
5月5日に行われる大祭「神幸祭」では、3地域の氏子(上一乗寺・下一乗寺・一乗寺住宅自治会地域)によって、それぞれ御神輿が巡行します。
当日は稚児行列・お囃子・サンヨウレホウキ・子供神輿・女神輿など地域それぞれ特色のある御神輿が見る者を楽しませます。
その御神輿を先導するのが「菊鉾」「龍(りょう)鉾」「柏鉾」 の三基の剣鉾で、ルーツは祇園祭の山鉾と同じといわれています。
長さ6~7m、重さ30~40kgもの剣鉾が差し上げられ、剣の部分を前後左右に大きくしならせて、鈴を美しく鳴り響かせながら練り歩きます。
剣が前後に揺れる様子には神を招く意味があり、鈴の音には霊魂を鎮める効果があるとされ、神が通る道筋を清めます。
剣鉾を鳴らすためには熟練した技術、さらには重い剣鉾を支える力が必要とされるため、この役割を担う男性たちは祭の前だけでなく、年間を通じて鍛錬を積んでいます。
間近で見ると大変迫力のあるこの剣鉾は京都市登録無形民俗文化財にも指定されています。
毎年8月31日の夜に行われる「八朔祭(はっさくさい)」。
これは五穀豊穣、厄除け、家内安全などを祈願する祭事で、神事やお千度詣に続いて、鉄扇音頭が奉納されます。
鉄扇音頭は400年ほど前、一乗寺に住んでいた僧侶・鉄扇が伝承した踊りで、念仏踊りが変化したものとされており、こちらも京都市登録無形民俗文化財に指定されています。
太鼓や笛などの楽器類は使わず、楽譜もありません。
中央に組まれた櫓(やぐら)に音頭取りが乗り、音頭取りの鉄扇節に合わせて周囲の踊り子たちが踊ります。
「ドッコイ」「ソレ」といった掛け声が特徴で盆踊りに似ていますが、雅楽の所作に影響を受けたといわれており、踊る様はゆったりと静かで優雅でさえあります。
神社の歴史や祭事が楽しめる御朱印なんや
八大神社で授与される御朱印は常時3種類あります。
通常の御朱印は八大神社ゆかりの宮本武蔵の姿が押印されたもので、境内にある武蔵像がモチーフとなっているため、ブロンズの緑色が印象的です。
また、社名の角印とともに、中央上部には八坂神社と同じ御神紋「左三巴」と「木瓜(もっこう)」が押されています。
見開き2ページにわたる華やかな「特別御朱印~祭礼~」は、八大神社に伝わる祭礼の歴史と風景が描かれています。
右面中央上部には金印の御神紋があり、中央の墨書「八大天王」は明治時代の旧称で、その印影は八大神社に隣接する詩仙堂を造営した江戸期の漢詩の大家・石川丈山(じょうざん)の筆によるもの。
これは、八大神社へ寄贈された扁額(へんがく)の書の写しとなっています。
左面には5月5日の神幸祭で巡行する伝統の「八角形の神輿」と「剣鉾」の印が押されています。
もう一つの特別御朱印は、季節に応じた色紙に年間の祭事が描かれた「季節の彩り御朱印」(書き置き)です。
12~2月はお正月のお飾りと「節分大祓神事」のお焼き上げが金色で描かれ、3~5月は農作物の収穫の吉凶を占う4月の「神弓祭」と5月の大祭を男の子が盛り立てる「サンヨレ踊り子」が描かれています。
6~8月は早苗の順調な育成を占うために行われる7月の「湯立神事」と郷土伝統芸能である8月の「鉄扇踊り」が、さらに9~11月は秋の実りに感謝し、重陽の節句をお祝いする10月の「粟御供祭(くりごくさい)」と11月の「七五三詣」の福笹が描かれています。
八大神社で行われている数々の祭事を知ることが出来る楽しい御朱印となっています。
※特別御朱印に描かれている内容は変更される場合があります。ご了承ください。
御朱印帳は2種類、各2色あります。
ひとつは、表面に下り松をバックに二刀を構えた武蔵が、そして裏面には社殿の風景に御神紋と社名が、それぞれ金色の織で浮かび上がる、とても力強い印象の御朱印帳です。
紙は上質な鳥の子紙(薄いクリーム色の紙)が使われているので、墨の乗りが良く、厚みがあって裏写りしにくいと評判です。
もうひとつの御朱印帳は三基の剣鉾が美しい織で描かれたもの。そこに御神紋と武蔵にちなんだ二刀や松の絵柄が入っています。
こちらは同じ図柄の御朱印帳袋もありますので、セットで揃えるのもおすすめです。
洛北の寺社を御朱印とともに巡りまひょ
京都洛北地域の寺院・神社の会「京都洛北・森と水の会」では、平成26年(2014年)8月より「ご朱印巡り」がスタートし、好評を博しています。
「洛北地域の様々な寺院や神社をより多く方々に巡拝いただき、そこにある豊かな自然環境や歴史文化に触れていただきたい」との思いで、八大神社のほか、上賀茂神社、下鴨神社、三千院門跡、鞍馬寺、貴船神社など30社寺の会員によって構成されています(2020年2月現在)。
まずはご自身の御朱印帳を持参して、各社寺で御朱印を授かってください。
その際、専用リーフレット(各社寺で無料配布)に確認印をいただきます。
以前に30社寺で授かった御朱印でも確認印が受けられます。
10社寺の確認印を受けられた方には、杉の間伐材を使って製作されたコースターが指定社寺で進呈されます。
期間は特に設けられていませんので、ご自身のペースで、八大神社とともに自然あふれる洛北界隈の寺社を散策してみてはいかがでしょう。
御朱印あれこれ「御朱印をいただく際の心得」
大きな寺社では混雑を避けるため、御朱印を書く方が何人もいらっしゃることがあります。
ただ、こちらから「この方に書いてほしい」と書き手を指名することはできません。
以前にこの文字を書いていただいた方にもう一度お願いしたい、ガイドブックに載っている御朱印と同じ物がほしいと思っても、書き手の方が変わることもあれば、同じ方でもそのときどきで筆致が違うこともあります。
一人一人のために、ひと筆ひと筆、心を込めて書いていただいているもので、当然ながら同じものは一つとしてないのです。
一期一会の巡り合わせに感謝しながら、御朱印をいただきましょう。
取材協力 : 八大神社
〒606-8156 京都市左京区一乗寺松原町1番地
電話番号 : (075)781-9076
FAX番号 : (075)712-4499