下岡清富氏インタビュー

下岡清富氏プロフィール

昭和48年4月27日生。主な仕事は茶畑での農作業、製茶工場。

受賞歴

「第75回全国茶品評会・かぶせ茶部門」農林水産大臣賞(令和3年)
「第68回関西茶品評会・玉露部門」農林水産大臣賞(平成27年)
「第69回全国茶品評会・かぶせ茶部門」農林水産大臣賞(平成27年)

茶づくり名人・下岡清富氏に会うため宇治田原町を訪ねました

伊藤久右衛門:
下岡さんの茶園で作られている、お茶の種類を教えて下さい。

下岡:
メインは玉露。他に煎茶、かぶせ茶、碾茶など一般的なほとんどの茶種をつくってます。

伊藤久右衛門:
年々、消費者に好まれるお茶のタイプは変わっているのでしょうか?

下岡:
僕がやり始めてから肥料を親父(下岡久五郎氏)と相談して変えました。消費者の好みが香りの良いお茶から味重視に変わってきたので。旨味がでるように動物性有機を肥料に加えたりしました。でも全体が味重視になると逆に「昔ながらの香りの良いお茶はないの?」という声も聞いて。そういう良い特徴も残したい、残していこうと。おおまかには世間の好みに合わせますが、守らんとあかんところは守っていこうと思ってます。

宇治茶はどのように作られているかお聞きしました

伊藤久右衛門:
お茶を収穫するまで一年間のおおまかな流れを教えて下さい。

下岡:
5月のゴールデンウィーク頃から一番茶の収穫が始まって、7月下旬に二番茶の収穫が終わり、そこからは肥培管理※です。お茶摘みの時だけ忙しいみたいなイメージを持たれるけど、秋頃からお茶の木の成長に合わせて途切れないように肥料をやっています。毎月1回肥料をやるのが理想です。そしてまた次の新茶時期を迎えます。

※肥培管理(ひばいかんり)
作物を栽培する際に、施肥や水やり、整地・耕転・除草や害虫駆除などを適切に管理すること。

良いお茶が作れる土壌には良い柿が育つのだとか。つるの子柿がたわわに実をつけていました。

伊藤久右衛門:
よく桃栗三年といわれますが、お茶は何年目から摘めるようになりますか?

下岡:
植えて4~5年で摘めて5年目くらいから採算が取れるようになります。この時期のお茶の木は若さがあり摘んだお茶も美味しい。でも何十年経った古いお茶の木も管理が良かったら美味しいお茶が出来ます。植えた場所がその品種に合っているか?こっちも植えてみて10年とか15年とか経たんとわからないし。最初は順調に新芽が伸びてきても、長い目で見て「あかんかったなぁ」というときは植え替えたりします。

茶業を選ばれたことについてお聞きしました

伊藤久右衛門:
お茶づくりを仕事にしようと決められたのはいつ頃ですか?

下岡:
子供の時から親が忙しそうにしているのを見ていたからいつかは農家になりたいなと。高校から大学ぐらいの時に、あらためて農家っていいなって。そこでお茶をやるのか野菜をやるのか迷って。野菜は施設園芸とか格好良く見えたから…やりがいあるのかなぁと。でも最終的に代々続く家業やからお茶の道を選びました。

宇治という茶づくりの地

伊藤久右衛門:
宇治田原町で上質な玉露が出来る理由は、やはり土壌が合っているからですか?

下岡:
宇治田原町は粘土系とか赤土の土地が多いから、お茶の木の特性をちゃんと引き出せます。力のあるお茶というか。それで茶の木のパワーとか品種の特徴が出やすい。覆い香ももちろんやけど、覆い香だけではない複雑な味わいを感じてほしい。新茶時期から寝かした(時間が経過した)あとも味が熟成されて美味しいです。

※覆い香(おおいか)
玉露の持つ独特な香り。玉露は一番茶の新芽が伸びだした頃から日光を遮った覆下園で作られ、旨味成分が豊富。

伊藤久右衛門:
お茶づくりの今と昔で変わったことはありますか?

下岡:
碾茶(抹茶の原料)は一番茶しか収穫してなかったのが、加工用やお菓子用の需要が増えて二番茶も採るようになって。でもたくさん採ってしまうとお茶の木が傷むから最低でも採った分は肥料を戻してます。面積も昔やったら0.5ヘクタールで経営していけたんが、今は3ヘクタール必要。仕事も効率化せんとあかんし、コスト管理も大事です。

お茶をもっと気軽に、もっと身近に

伊藤久右衛門:
若い方に向けて、急須でお茶を淹れる魅力を教えてください。

下岡:
僕個人は新しい急須とか格好いい茶器とか持ったらお茶を淹れたくなります。「こういう急須でないとあかん」とか「こういうふうにちゃんと飲まないとあかん」とかいうよりは、例えばガラスの器ってお洒落やないですか、ワイングラスに淹れるとかでもいいし。こんな中年に聞くより若い人が自由に考えて楽しんでくれたらいいんとちゃうかな。

休日は登山に

伊藤久右衛門:
休日にされている趣味を教えていただけますか?

下岡:
旅行はしょっちゅう行ってます。あとは年1回か2回、息子と登山とか。畑仕事で坂を上ったり下りたりしてるのに、山登りに行きます。

伊藤久右衛門:
印象に残っている山はありますか。

下岡:
今年は下ノ廊下…黒部ダムから宇奈月温泉の欅平、トロッコ列車あたりです。関電の水力発電とかの開発時代、100年くらい前に作られた道で、こんな谷のところをそこを30数キロとかえぐって道が作られてるんです。下まで300mくらいあるんちゃうかな。

インタビューを終えて

茶づくり名人下岡清富氏のお話は、じっくりと時間をかけて熟成される蔵出し玉露のように、作り手の経験がにじみ出る奥深さがありました。日々の手入れと数年単位の見極めの両方が、下岡氏の作られたお茶を特別なものにしているのだと感じられます。下岡氏作の珠玉の玉露を、ぜひ味わってください。

今しか味わえない逸品をお届け 下岡清富氏作 蔵出し玉露

下岡清富氏作
秋の蔵出し玉露 40g袋入【数量限定】

新緑の八十八夜の季節に摘まれた若芽が、夏を越して成熟した大人の茶葉に生まれ変わります。
冷蔵倉庫の茶びつの中で人の手を全く加えず、じっくり・ゆっくり旨味を茶葉に蓄えました。
宇治茶ならではの気品高い香味を存分に味わっていただける逸品です。

価格:1,728円(税込)

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